ビーチクルーザーは、特に海岸付近で使用されることを考慮した自転車を示す造語で、日本国内において、アメリカ国内で発達した「クルーザーバイシクル」(Cruiser Bicycle)のことを指す。
広大な大陸の国アメリカでは、ヨーロッパのような都市間移動手段としての実用的な自転車文化が根付きにくく、ペニー・ファージングが廃れた後にイギリスからロードスターを輸入し、19世紀末にはSchwinnやColumbia、Hawthorneなど数社が国産化したものの、その後も自転車を取り巻く環境は同様であり、二輪車もオートバイの開発に重点が置かれた。 (因みに20世紀初頭の段階ではオートバイと自転車のフレーム構造は非常に共通点が多く、自転車に原動機を取り付けたものが、すなわちモーターサイクルと言う状態であった。) 1920年代以降、フォード社などによる自動車の大量生産によるモータリゼーションの時代へと移行することによって、アメリカの国内一般向けの自転車は、主に近距離専用の移動手段として、自動車が使用できない、あるいは使用する必要の無い状況(大規模な倉庫・工場内での移動や、ごく近距離の通勤・通学・運搬など)および、自動車免許取得年齢に達しない青少年向けに特化されていくことになる。
日本におけるビーチクルーザーの原型である、アメリカのクルーザーバイシクルの歴史は古い。第一次大戦の新兵器だった航空機は、1930年代に入ると高速交通機関としての発達が著しく、その影響で鉄道車両や自動車なども、航空機に着想を得た空気抵抗=空力を意識した流線型デザイン (aerodynamics designe) が流行した。オートバイも流線型デザインを取り入れたものが数多く発表されるなか、1934年にSchwinn社が「Aerocycle」と名付けた、そのオートバイや航空機をモチーフにしたストリームラインデザイン(streamline designe)の堅牢な自転車を発売したところ、当時の青少年に支持されて爆発的な人気を得た。これに追随して他の自転車メーカーが、「Aerocycle」を模倣したデザインの自転車を次々に製造、1940年代には多くの派生形を生み出し、アメリカ国内で生産される自転車デザインの主流となった。このストリームラインフレームは、アメリカの自転車産業が台湾・中国に生産拠点を移した現代においても、アメリカンタイプのスタンダードデザインの一つとなっている。
1945年の第二次大戦終戦後、日本の工業生産力が低下して物資が極端に不足していた時期には進駐軍が配給物資としてクルーザーバイシクルを持ち込み、日本各地で実用車の代用とされて運搬やリヤカーの牽引などに使用された。
1963年、Schwinn社が発表した、ストリームラインから発展させたデザインの自転車「Sting-ray」がアメリカ西海岸の多くの若者(チカーノ、ヒッピーなど)に支持され、その影響から1970年代初頭には自然回帰志向や環境保護意識の高揚により、アメリカ国内において自転車ブームが起きた。それ以前より存在していたクルーザーバイシクルもカリフォルニア州などの海岸地帯で地元のサーファーに愛用され、彼らのライフスタイルがそのまま日本国内に持ち込まれることによって、海岸を走るクルーザー=ビーチクルーザーという名称が一般的に使用されるようになった。
先に述べたようなストリームラインと呼ばれる、モーターサイクルを意識した流麗かつ頑丈な特徴あるフレームに大きめのハンドル、太めのバルーンタイヤを装備しており、さらにサスペンションや大型のヘッドライト、燃料タンクを模した部品などで過度に装飾されているものもある。変速機能は3〜5速程度の内装式変速機を装備している場合もあるが、大抵は変速機構を持たない。どちらかと言えば安価な自転車と言えるが10万円近い価格のものも存在する。
制動装置として前・後輪の両方にキャリパーブレーキがあるものとに、前輪がキャリパーブレーキで後輪にコースターブレーキが装備されているものとに分かれる。前・後輪がキャリパーブレーキのものは一般的な自転車のブレーキ操作と同様だが、コースターブレーキを装備したものはブレーキレバーはハンドル右側の前輪用のみとなり、後輪はペダルを逆に廻すとブレーキ機能が働く仕組み (踏み止め) である。なお、アメリカ国内向けの製品には前輪ブレーキが装備されていない場合が多い。ごく稀にトラックレーサーと同じ固定ギアの、ブレーキが無いものも存在する。
アメリカでは登場以来、現在も街乗り用の軽快車や実用車に近い使われ方をしているが、1970年代中頃、その頑丈さを生かして改造クルーザーバイシクルでサンフランシスコ郊外などで山遊びをする行為 (Downhiller) が流行し、これが後のBMXやマウンテンバイクの開発・発展につながる素地になった。
日本におけるビーチクルーザーは「サーファーが浜辺まで移動するための自転車」という位置付けなので、サーフボードを積載する部品である「ボードキャリア」をフレームに取り付けての使用例が多く見られる。
なお、「オーバーサイズ」と呼ばれる車体の全長が極端に長いタイプは、日本の公道で乗り回す事は出来ない(法令により禁止)。

